(寒い、寒い、寒い寒い寒い寒いさむ・・・・)
心の中で、呪文のように唱えながら、急ぎ足で彼の人のところに向かう。

声に出して、言わないのは、「寒い寒いうるせぇ!!」と怒鳴られないためだ。
今年の夏は、「暑い暑いうるせぇ!!」と怒られた。

彼曰く、「心頭滅却すれば、火もまた涼し。逆も然り。」らしい。
その割には、暑すぎたり寒すぎたりしたら、ちょっと機嫌が悪くなってるように感じるのは、気のせいか?


目当ての彼を見つけて、自然と笑顔になる。
ほんとは、後ろからこっそり行って、「だーれだ?」的な目隠しゴッコをしたい。

しかし、悲しいから、彼は戦闘のプロ。だいぶ前から、オレの気配に気がついてるハズだ。
その証拠に、ほら!今振り返った。

「ブッ、なんだその顔!」

振り返った途端、笑顔というか吹きだしたんだけど、笑顔が見れて嬉しい。

「えっ?なんか、変さー?」

「鼻が真っ赤。トナカイなら、ちょっと前に帰って行ったんじゃないのか?」

笑いを堪えながら、神田ユウは言う。今日は、なんか機嫌いいみたい。
ぶー、と膨れてながら鼻をさわってみるとたしかに、冷たくなっていてヤバイ・・・。さっきから、鼻がジンジンする!

「ユウー!超寒かったんさ!!鼻あっためて〜!」

グリグリと鼻をユウの頬っぺたに擦り付ける。
止めろよっ!と笑いを堪えながら言ってるトコみると相当機嫌がいいらしい。

「ユウの頬っぺたも冷たいさ!!」

ぎゅぅーっと両手でユウの頬っぺたを包み込む。
そのまま、ユウの唇にキスをする。頬っぺたに回していた右手を後頭部に、左手を腰にまわして・・・・。

ちゅっ、ちゅっ、とフレンチキスの時は、大人しくしてたユウもだんだんオレの理性が持たなくて、深い口付けになると体を引き剥がそうと抵抗を始める。
その為に後頭部に、手を回したんだけど。ちょっと強引だけど、逃がすもんか!との勢いで、逃げる後頭部を押さえつけ、下唇を甘咬みして吸い上げる。
ユウも必死に逃れようと、頭を左右に振ったりと必死だ。

お互い負け時と、攻防を広げ、半分ケンカみたいなキスは続いた。

「ふっ・・・、はぁっはぁっはぁっ。」

オレが解放した時には、ユウは目が潤んで息切れがしてる。
寒さで余計白くなった肌に、血行が良くなった唇だけ、煽情的な赤を放っている。

思わず、ゴクリと唾を飲み込むが、急いでポケットから、あるものを取り出した。

「ユウー!!Happy New Year!!」

ユウの目の前に、懐中電灯を吊り下げる。
時刻は12時ちょいすぎ。

「何やってんだ。」

「足掛け二年オレら、キスしてたね。」

ニコってわらってそう言うと、呆れ顔だった彼は一瞬で赤面顔。
笑って、頭を撫でようとするとフィッと逃げられる。

「ほんとは、ユウのあったかーい中で新年をむかっ・・・・・・」
ゴスッ

ヒュッと頬の横を風圧がよぎる。当然視線の先には、六幻を片手にユウさんが・・・・そう般若の様な顔で・・・・。

「あっ?何か言ったか?六幻、今年初の獲物はウサギだとよ」

「イヤイヤイヤ・・・・!!言葉足らずでした!ユウの暖かい部屋の中で新年を迎えとうございました!!」

「フンッ」

冷や汗がタラりと背筋を通った。
今年は、ユウたんも冗談が通じるようになって欲しいさ!!・・・・・まぁ、ちょっと、かなり本気の願望だったけど。

「てかさー!ユウなんで、忘年会来なかったんさ!!超探し回ったしさー!!」

ぶうーと口を尖らせてユウに文句を言う。
パーティー会場に遅れて行くと、皆、神田は蕎麦を食べに来て一瞬で出て行ったという。

年をまたぐ瞬間は、何歳になっても、テンションがあがるし、ユウと一緒にいたかった。
ユウの部屋、鍛錬場、自分の部屋、書庫を探し回ったが、どこにもいない。

たまたま、廊下の窓からこの寒さじゃ明日、雪積もってたりすんのかなー?と思って、窓の外を覗いた時に、愛しい彼を発見した。

「あー、ウサギ見にきた。」

「ウサギ?どこさ?こんな寒いのに!!」

「あそこ。」

ユウのキレイな指先は真上を描いて、その先にはキレイな満月があった。
今日ほど、冷える日は空気が澄んでいて、かなりくっきりとした明るい月だった。

「へっ?月じゃんー。ユウ、月を見に来るなんて、ロマンチストさね・・・。」

「ちげーよ。満月だし、ウサギが見えるかと思って。」

「ウサギ・・・?」

「月では、ウサギが餅をついてる。」

「えっ?マジで?月の模様ってウサギなんさ?」

「昔から、そう言うだろ?」

「え?うーん。オレが聞いたことあるのは、ロバとか本を読む女の人とか・・・・あと、キャベツ畑の泥棒とか?」

「お前、書庫ばっか篭ってるから、目が悪くなるんだろ。見てみろよ。どう見たって、ウサギだろうが!」

そう言われて、じっくり見てみればウサギに見えなくも・・・・ないかな。
ライトみたいにキレイに光る月を見上げて、ある考えが浮かんできて、笑いがとまらなくなった。


だって、オレが書庫に篭ってて、年越しの瞬間会えなかったから、代わりにウサギを見に来たって思っていいですか?
ユウは、オレの事、ウサギってよく言うから、ホントはオレに逢いたかったけど、逢えなかったから、代わりとしてウサギを見に来たってのは、自惚れすぎでしょうか?



「何、ニヤニヤしてんだ!!」

「んーん!何でもなーい!ユウ、今年もよろしくね。」

ユウが今年はセクハラ、下ネタ控えろよ。と言うがが聞こえないフリ。
月に感謝の気持ちをこめて、手を伸ばした。












どうしたって

届かない空に 手を伸ばした


なんか うれしかった



          だって 君も手を伸ばしていたから


                   I miss you,・・・・・・・・and I love you





最後の詩のようなものはラビュを知る前に考え付いた詩なんです。
なんか好きで、使ってしまいます。また使いたいなー。
ケンカみたいなKiisはラビュの醍醐味だと思ってます。2010年もハッピーラビュイヤーに!!