(学パロ)君がいた公園参加作品
『だって、ラビくんてあたしの事あんまり好きじゃないよね?』
―――――えっと、悪いのはオレですか?
付き合って三ヶ月の彼女が他の男と歩いているところにバッタリ遭遇。
ただそれだけなら、よかったんだが、彼女はその男と手を繋いでいた。
しかも、指と指をからめる恋人つなぎ。
オレは、男友達と歩いていたもんだから、その場は笑ってやり過ごしたら、その夜、彼女から話したいって電話。
内容はなんとなく分かってたけど、やっぱりというかなんというか『他に好きな人ができた。』と。
彼女は、隣の学校女の子。
結構、というか、かなりかわいい娘で、ウチの学校にもFANクラブがあるぐらい。
たまたま顔の広い友人が合コンを開いてくれたとき、彼女も来ていて。
そのまま、2、3回二人で遊びに行って、彼女から告白された。
正直、ラッキーと思って、付き合ってたんだけど、彼女は自分を一番大切にしてくれなきゃ気がすまないみたい。
オレが男友達と遊ぶ約束してるから、と言ってデートを断るとそれはもう機嫌が悪い。
『だって、ラビくん他の友達と遊んでる方が楽しそうなんだもん。』
『私のこと、あんまり大事にしてくれない。』
『だから、他の子が優しくしてくれたら、私そっちに行っちゃうよ。』
一方的に、まくし立てられるように言われた挙句、自分を正当化する彼女。
結局、『じゃぁ、別れよう。』という言葉は、オレから発した。
「おはよーさ!」
教室の扉を勢いよく、開けると囲まれるように「彼女とどうなった?」と質問の嵐。
スポーツ紙の囲み取材か!!とツッコミたくなるくらい。
『別れたよ』と告げると、気のせいか、いや、気のせいでもなく目をランランと輝かせた男友達が肩を組む。
オイ、『付き合った』って言った時より、嬉しそうじゃねぇか・・・・。
「よっ!!失恋大魔王!!」
「色男がはじめて、フラれましたー!!」
「クリスマスは、一人で過ごすのかわいそうだから、誰か女子ヒマな奴付き合ってあげてー!!」
「今日は、失恋パーティーしてやるよ!!」
散々、囃し立てて、クラスの女子も「ラビくん、かわいそー。」という声もどこか楽しげに聞こえる。
「もう、うるさいさ!!」
なんとか、囃し立てる男子を振り切って、自分の席までたどり着く。
机に突っ伏して、膨れていると、コツンと頭の上に冷えたペットボトルが置かれる。
手探りで、そのペットボトルを受け取り隣の席に顔を上げる。
「おはよーさ・・・・。」
「朝から、災難だな。」
「絶対、あいつら楽しがってるさ。」
ミネラルウォーターのペットボトルを片手に、黒髪の美人がオレを見下ろして笑う。
唯一、唯一、残念なのは、その美人はオレと同じブレザーにズボンを履いていること。
むちゃくちゃ美人なのだが、れっきとした男なのだ。
隣の席の美人は、神田ユウ。剣道部の主将。
まぁ、言わずもがな、モテる男。FANクラブというか、お互いけん制し合っている女子の同盟があるくらい。
と言っても、ユウは彼女をつくるなんてめんどくさいらしく、全く彼女を作る気配がないが・・・。
「どしたん?コレ。」
ユウが渡してくれたスポーツドリンクのペットボトルを指す。
ユウは甘い物が嫌いだから、ペットボトルを買うときは、お茶がミネラルウォーターなのに、珍しい。
「差し入れだとよ。」
「あー・・・・、朝からモテるさねぇ・・・。」
「うるさい。フラれたからって、卑屈になってんじゃねぇぞ!」
「あっ!!ユウひどいさー!!人の傷口に大きくするなさっ!!」
「はいはい〜!ラビくん、フラれたからってうるさいよ〜。HR始めるよ〜。」
担任のコムイののんびりした声でいつもの学校が始まる。
「ユウー!肉まん買って、公園で食べよー!!」
寒いからといって、早足になるユウの肘をグイグイと引っ張る。
今日は、ユウの部活が休みの日。
失恋パーティーをするという、クラスの男子から逃げてきて、ユウと一緒に帰ってきた。
アレ以上、からかわれてなるものか!!
思った以上に、隣の学校のアイドルと付き合っていたことに、不満だった男子が多く、普段あんましゃべった事ない男子までが自分を冷やかしに来る。
コンビニで肉まんとから揚げを買って、ユウに『傷心なんだから、おごってよ〜!』と言ったら、
『サイフ持って来てねぇ。』とのたまった。
そのまま、近くの公園に行くと寒いせいか、ほとんど子供の姿はなかった。
メインのブランコには、座りながら、DSを必死にやっている小学生。
・・・・・ねぇ、ソレ家でやったら・・・・?
ベンチには、誰も座っておらずドンと腰掛けるとズボンの越しにヒヤッとする感触。
うー・・・と震えを我慢して、コンビニの袋に手を伸ばす。
「ユウたん。あい。」
ユウを隣に座らせ、肉まんを頬っぺたにくっつける。
ムッと眉間に皺を寄せたが、肉まんが食べたかったのか、大人しく受け取る。
ちょっと熱すぎる肉まんを一口かじると予想以上に熱くて、思わず、「ふー、ふー!!」と口から熱気を吐き出す。
それをちょっとオツムが足りないユウはため息と勘違いしたのか、自分の肉まんも手をつけずにオレの顔を覗き込む。
「・・・・あんま気にすんなよ?」
「ほぇ??はふっ。」
ついでに言うと、あまりの熱さにオレの顔は、ちょっと涙目になってたりする。
そんなオレを見て、目をそらし、言いにくそうに口ごもる。
「・・・・あー、元気だせって。次とかすぐ、あんだろ。」
「へっ?・・・・あーあー。」
そこで、やっとオレは、ユウが振られた俺のことを慰めてくれてるのだと気がついた。
予想外の事に、肉まんへの格闘でそんな事すっかり忘れていた。
「あー、なんつーか。ちょっとビックリしてるんさよねー。」
「まぁ、急にフラれりゃ誰でも、ビックリするだろ。」
「いや、そうじゃなくって。・・・・あんまショック受けてない自分にショック受けてるっつーかさ。」
「は?」
怪訝そうにユウが眉をよせる。
正直言って、昨日の電話で別れる事になって、一番に思ったのが、コレでユウと気兼ねなくもっと遊べる、だったりする。
妙にスッキリした気分の自分に、彼女が言うようにやっぱり大事にしてなかったのか、と自分に嫌悪感を抱いたり・・・・。
「正直、彼女に言われた事あたってたしさ・・・・。彼女と遊ぶよりユウと遊ぶ方が全然楽しかったし・・・。」
「そりゃ、男同士だから、気兼ねなくて、楽なんだろ・・・。」
「そうなんさねー。女の子って気を使わなきゃいけないしさ。あーあ、ユウが彼女だったら、ホントにいいのに!!」
「あほ。」
間髪いれずに、そんな返しが返ってくる。
何気なく言った「ユウが彼女だったら・・・。」という言葉に妙になんか心が暖かくなった。
あれ・・・?あれ・・・・?
なんか、想像してみたら、超幸せなんじゃね・・・?
「ユウ!!オレ達つきあおっか!?」
「ハァ??」
ユウが何言い出すんだ?といった表情でこっちを見ている。
ほんとに、ビックリしたようで、切れ長の目が大きく見開いている。
「だって、ユウもさ、彼女作るのめんどくさいって言ってたさ!!オレ、ユウの事超ー!!好きだしさ!!」
ね?ダイジョブ!!とグッと親指を立ててみれば、ユウが般若の様な顔でその親指を反対側に曲げてくる。
イタタタタ・・・・・。ギブッ、ギブッとユウに訴える。
「だいたいなー、お前は付き合う=遊ぶって考えてるから、そうなるんだろ!!
付き合うって、遊ぶ以外にも・・・・、その、ほらっ、色々あんだろっ!!」
ユウが、寒さのせいだけじゃなく頬を真っ赤にして叫ぶ。
下ネタ苦手なユウは、今時の高校生じゃ珍しいくらい純情で、キスとかいう単語自体恥ずかしいらしい。
「あー、ちゅうとか、えっちとか・・・・・?うーん、ユウとなら・・・・大丈夫!!」
ドゴォッ
鳩尾にボディーブローが入り、さっき食べた肉まんがリバースしてきそうで、必死に口元を押さえる。
ユウを見ると、耳まで真っ赤にして怒鳴っていた。
「てめぇ!今、なんの想像しやがった!!」
よっぽど、恥ずかしいのかちょっと涙目になりながら、オレの首をギリギリと絞めてくる。
ちょぉっとタンマと言って、今朝ユウからもらったペットボトルを飲み干して、一息つく。
ユウも、ペットボトルを飲んで一息ついているようだ。
「ってかさー、真面目に考えたんさよ?」
「どこがだ。」
「だって、ユウってオレの事好きじゃん。」
「だ、誰がだっ!!自意識過剰だ!!」
ユウは良くも悪くも自分に正直だから、嫌いな人間とこんな風に時間を過ごすことはない。
それが、上っ面ばかりの人間関係の中で、オレはすっごい楽だった。
ユウの隣では、安心して素の自分が出せる。無理に盛り上げたり、会話に気を使ったりせずに居れた。
「まぁまぁ、最後まで聞いてさ。オレさっき気づいたんだけど、ユウが思ってるより、オレはユウの事が好きさ。
・・・・例えば、ユウに彼女ができるなんて、絶対嫌さ。」
ユウに彼女が出来て、自分よりも彼女を優先させられたりしたら、我慢できない気がする。
ただ、友達としての独占欲が強いのかと思ってたけど、他の男友達だったら、こうはならない。
真っ直ぐにユウを見つめたら、ユウの両の瞳に自分が写っていてなんか嬉しかった。
「・・・・んな事言っても、お互い友達としての好きか、それ以上か、なんてまだわかんねぇだろ。」
ユウが困ったように、目をそらす。
友達としての好きとユウに認めさせた、という事は、少しは、懐柔できたのか。
手に持ってたままの空のペットボトルと見て、ある事を思い出した。
「ユウ!!前、オレが進路迷ってる時、こう言ったじゃん!!
『右に行くか、左に行くか迷ってるんだったら、とりあえず進んでみろ。どっちに進んだって、正解なんだから。』って!!」
ユウの考える癖で下唇を軽くかんで視線をそらしているのを見て、ペットボトルを持って立ち上がる。
数歩ユウの座っているベンチから離れて、叫ぶ。
「だからさー!ユウ!このペットボトルがゴミ箱に入ったら、オレと付き合ってさ!!」
「はぁっ!!」
「だ・か・ら!!取りあえず、オレはユウと前に進みたいんだって!!」
「んな、事言っても、お前はそれでいいのかよ!?」
「うん!もし外れたら、今日はあきらめるー!」
「『今日は』ってなんだよ!!」
ユウの怒鳴り声に笑いが含まれているのを感じて、ラビは大きく振りかぶった。
―――――――ペットボトルが空を跳ぶ
『君がいた公園』ラビュ現代(学生)パロ企画に参加させていただきました!!
素敵な企画を立ち上げていただいてありがとうございます。
なのに、遅刻して申し訳ありませんでした。
参加できて幸せでした!!ありがとうございます!!