11話









「ユウッ!!お、お待たせっ」

「お、おお・・・・。」

「・・・・・・・。じ、自転車とってくるさ!!」

バタバタと自転車置き場まで疾走。
昨日、公開告白?をして、晴れてつきあうことになったオレ達。
嬉しいけど、それ以上に意識しすぎて恥ずかしい。

昨日自然にふるまうように、脳内シュミレーションを入念にやったが、実際はぎこちないどころの話ではない。

こんなんじゃダメさ!!
今日は、絶対アレ言うんだから!!

自転車を押しながら、決意を胸にユウのトコに戻る。

「ユウッ!!お、お待たせっ」

「お、おお・・・・。」

「・・・・・・・。」

ってダメダメじゃん!!さっきと同じじゃんか!!

「ユウ・・・・///なんか、照れるさ。」

思い切って本心を言うとユウはふっと笑ってくれた。

「なんか、うまくしゃべれねぇな。」

「うん。でも、前と何も変わらないし、普通にしよ!!」

「普通に?」

うん!とうなづいて、ユウの鞄を自転車のカゴにのせる。
乗って、というと戸惑いながらも、乗ってくれた。

ユウは、自転車の後ろに立ち乗りして、スピードを出すと嬉しそうな声をだす。
ユウにいいトコを見せたくて、かなりがんばって自転車をこいだ。

おかげで、ユウの家に着く頃には、汗が滝のよう・・・・。
ユウに汗臭いって思われたら、どうしよう!!となるべくユウから、離れるようにして、家に上がった。






















まずい・・・・・。
汗が止まんない。

動いている間は、まだましだったが、止まっていると汗が噴き出す。
ユウがクーラーを入れてくれたが、汗がしたたり落ちそうだ。

部活で使ったタオルは塩素臭くて使う気にならなかったが、背に腹は、変えられない。
湿ったタオルで汗をぬぐっていると、ユウがお茶を運んできてくれた。

「お前、すごい汗だな!」

「あ、うん。暑くてさー。ごめんね。」

ユウが氷の入った麦茶をテーブルに置いてくれる。
一気にソレを半分ほど飲みほす。

「シャワー使うか?」

「え、・・・・いいの?」

つきあって間もない彼女ん家でシャワー使うってどうなの?っと一瞬迷ったが、あまりの汗にお言葉に甘えさせてもらう。















シャワーを浴びながら、ふぅっと息をついた。
熱いシャワーがまとわりつく汗をを洗い流す。

つい、いつかユウとそういう事してシャワー浴びるときが来るんだろうなっと想像してしまう。

でも、ユウん家は親戚と一緒に住んでるから、マズイよな。
やっぱ、初めてん時はオレん家なんかなー。

妄想がとまらず、顔がニヤける。
ユウと付き合うという実感がなかったが、改めて叫びだしそうなくらい嬉しい。

「ラビ!×××、×××・・・・。」

ユウの声がしてビクッとした。
ニヤけた顔がバレたのかっと思って、ヒヤヒヤしながらシャワーを止める。

ユウは脱衣所の外から、しゃべりかけているようで、声がくぐもってよく聞こえない。

「ごめん!ユウ、何か言ったさ?」

「タオル・・・・、×××・・・・」

「あ!タオルさー!ありがとう!!」






がらっ

ガララッ




「うわぁっ!!」

「あっ!!・・・・ごめんさ!!」

ユウが脱衣所のドアを開けたのと、オレが風呂場のドアを開けたのが一緒だった。
つまり、ユウからはオレが丸見えだったわけで。
オレは、いま裸なわけで・・・・・・。

見られたさー。

頭に血がカァーッとのぼる。
ユウがもう一度、タ、タオル置きに入るからな!!と宣言した。

ガラス越しにユウを見て、火照った頬を冷やすため、シャワーを水に変える。














シャワーを浴びてさっぱりし、和室に戻るとユウが正座していた。
テーブルの上には、やりかけの夏休みの課題を広げて。

「ラ、ラビさっきは・・・その悪かった。」

「いや、ううん!!全然こっちこそごめんさー。」

目を伏せるユウがかわいい。
まだ少し頬が赤かった。

「びっくりさせちゃってごめんね。で、・・・あの、ユウに話があるんだけど。」

ユウが正座しているので、オレも正座する。
いつユウに言おうか迷っていたが、こういう話は、早い方がいい!!

正直、正座は得意じゃないんだが、がんばって背筋を伸ばす。

「なんだ?」

「あの、あのね。ユウ、オレ8月10日誕生日なんさ!!」

「もうすぐじゃねぇか!!」

ユウが驚いて、壁のカレンダーに目をやり、四日後か、と小さく呟く。

「んでね。10日ってお盆前で学校休みさ?水泳部も剣道部も。」

「ああ、そうだな。」

「だから・・・・・一緒に海に行ってください!!」


















初デートは海ってずっとずっと決めてたんさ!!








12話
















「つきあって欲しいとこがある。」

ユウに呼び出されるのは、初めてで。
待ち合わせには十分早くついたのに、もうユウは待っていた。

「ユウ!!ごめん!お待たせさー!!」

ユウは白のロゴTシャツに黒のショートパンツに黒のレギンス・・・・。
もう、はっきり言って犯罪的にカワイイ・・・・・。
どうしよう!!思わずその場でしゃがみこんだ。

「ラビ!!大丈夫か?」

ユウがあわてて駆け寄る。
ああ・・・・、ユウがオレの為に・・・・。

「ラビ?」

「ああ、ごめん。私服はじめて見たさー!めっちゃカワイイさね。」

「変なこと言うなよ。」

ホントの事なのに、ユウは顔を赤くして、怒った。

「それより、つきあって欲しいトコってどこさ?」

「海に行くって、デイシャに言ったら、中学のときの水着じゃダメだって言うから買いに行きたいんだ。」

中学のときの水着ってスクール水着?
それは、ユウが着たら犯罪さ!!
確かに、ビーチじゃ危険すぎる。

「ユウってあんま海とか行かなかったんさ?」

「ああ。中学の授業のプールしか行かなかった。」

高校のプールの授業は選択式だから、ユウは取ってなかったもんな。
デパートが近くなってくると、人通りも多くなってきた。
夏休みだから、同じように学生のカップルや親子連れが多い。

デパートのショーウィンドウを見ると、水着フェアは6Fでやっているようだ。

















「う゛っ・・・・・。」

「どうしたんさ?」

水着売り場の前に来るとユウは固まった。

水着売り場は、カラフルなビキニを着たマネキンがお出迎え。
男のオレとしては、かなり見たいけど、恥ずかしいような思いでいっぱいだ!!

「俺・・・、あんな水着無理だ・・・。」

ユウは、うう、と困った顔をしている。
もう、海に行けないかもしれない、と今にも言い出しそうな勢いだ。

「だ、大丈夫さ!!奥には、ホラ、ワンピースみたいなヤツもあるさ!!」

ユウを励ましながら、売り場の奥へと進む。
ほんとは、ビキニのユウもちょっとは、いやかなり、見たかったのだが・・・。
試着だけでも、してくんないかなーっとわずかな希望を持つ。

「ほんとだ。まだこっちの水着の方ならいけそうだ。」

ユウが、ワンピース型の水着のところでホッとした顔をする。

ユウに似合いそうな水着を2人で探した。
ユウは何でも似合うけど!!
黒もいいし、白もかわいいさ・・、ピンクとかはあんま着ないだろうなぁ・・・。

「俺、コレにする。」

ものの3分もたたないうちにユウは、決めてしまったようだ。

「どれどれ?」

「コレ。」

「ユウ・・・・。」

ユウがちょっと得意げに見せたものは、この売り場の中でよく見つけたねというぐらいのがっつりスポーツメーカーので。
ベストの様ながっちり首元まである白の水着と紺のハーフパンツぐらいの丈の長さの水着だった。

露出がほとんどない!!
これじゃぁ、水着の醍醐味が!!
男のロマンが!!

「よろしければ、試着なさいますか?」

俺らの様子を見て、売り場のお姉さんが近寄ってくる。
お、お姉さんも止めてさー。

「ユ、ユウ!!そういう水着はプールとかガッツリ泳ぐ人用の水着さ?オレらは海行くから、リゾートっぽい方がいいさ!!」

「そうなのか?」

「うん!!そうさ!ね、お姉さん?」

「そうですねー。海に行かれるんでしたら、表のマネキンに着せてるものとか人気有りますよ?」

お店のお姉さんの助け舟もあって、ユウはスポーツメーカーの水着をあきらめてくれたようだ。
グルッと売り場を一通り見て周り、ユウは目をシロクロさせる。

「こんなにいっぱいあったら、わかんねぇ。」

「んー!!あっちのとかどうさ??」

「お前選んでくれるか?」

ユウが、疲れたようなので、2,3個水着を選んでユウに渡す。
1つは、ワンピース型のもう1つは、キャミソール型、最後の1つは、願望をこめて、ビキニだ。

「よかったら、試着なさってください。」

さっきのお姉さんが笑顔で近づく。
ユウは、お姉さんの勢いに圧倒されたようで、試着室へと連行されていった。

ユウが試着する間ソワソワとユウを待つ。
売り場が売り場なだけに女の人ばっかりで正直恥ずかしい。

「いかがですか?」

お姉さんが声をかける。

「ユウー、着れたさ?」

「・・・・あ、ああ。」

お姉さんが、失礼します、と言ってカーテンを開けると、花柄のワンピースのユウが現れた。

スカートの丈は、水着が隠れるくらいなので、超短めだ。
その短いスカートの裾から、すらりとユウのキレイな足が伸びて、思わずゴクリと喉が鳴った。

「・・・・ユウ!!めっちゃカワイイさぁー!!」

「お似合いです。お客様。白い肌によく似合われていますよ?」

「どう?どうさ、ユウ?」

「・・・・これ、海に入るときも着てていいんだよな?」

「うん!だいじょぶさ?」

ユウはもじもじしたようにワンピースの裾を持ちながら俯く。

「コレ、中がビキニだから、・・・・イヤだ。」

「え?そうなんさ?」

中!!中、超見たいさー!!
心の中の叫びはしまっておいて、ユウに次の水着の試着を勧める。
記憶力の良さに感謝しながら、今しがたのユウの姿を目に焼き付ける。

次の水着は、白のキャミソールに、カーキのショートパンツ。
ユウの華奢な肩が露わになって、背中が大きく開いているトコが特徴だ。

ああ、もう抱きしめたい!!
そんな想いを胸になんとか平常心を装う。

「ユウどうさ?」

「うーん。コレにする。下がズボンで動きやすいし。」

「そっか!!よく似合ってるさ!!もう一個の試着はどうする?」

もう一個はビキニ!!さりげなく、さりげなく試着を勧める。
ユウは、チラッと壁に吊ってあるビキニに目を走らせ顔を引きつらせる。

「ぜってー、コレは嫌だ。」

そう言ってピシャッとカーテンを閉められる。
うう、オレの願望敗れたり・・・・・。
























「今日は、買い物つき合わして悪かったな。」

「ううん!!楽しかったさ!オレもビーサンとか買ったし。」

ニコッと笑って、ユウにビーサンの入った袋を見せる。
せっかくだから、海に行く準備もしようといろいろ買い物したのだ。

日がもう傾いて、街が赤く染まる。
夕陽にそまるユウがキレイで一瞬立ち止まった。

「どうした?」

「あ、ううん。なんでもないさ。明日、海楽しみさねー!!」

つきあい始めてまだ三日しか立っていないのに、どんどんユウに夢中になる自分にビックリする。
明日は、どれだけ夢中になるんだろう?






13話














「ユウー!!海ついたさー!!」

「んな、はしゃがなくても見れば分かる。」

ラビは、砂浜をかけおりピョンピョンはねる。
ユウもすぐに、砂浜まで下りてきてくれた。
ビーチは、夏休みもあって、海水浴客で賑わっている。

「ユウ、混んでるから早めに場所取りしよ!!」

「ああ。」

借りてきたビーチパラソルをどこにさそうかキョロキョロと探す。
朝早く出てきた甲斐があって、場所は十分確保できそうだ。

ビーチパラソルを2人で立て、シートに荷物を置く。

「ユウ、更衣室行くさ?」

「ん。下に着てきたから、別にいい。」

「そっか!!じゃぁ、さっそく海入ろうさ!!」

Tシャツを脱ぎ捨てて、水着になると、横からジィーッと、ジッパーの開く音がする。
隣をチラッと見れば、ユウがパーカーを脱いで、昨日買ったキャミソールの水着が中から顔をのぞかす。
ユウが服を脱ぐ様子にカァーと顔に熱が集まるが、目をそらすことができない。

次にユウがズボンに手をかけ、ボタンを外し、スルリと白い足を出す。
白い太ももに視線が吸い付き、顔を上げたユウとバチッと視線が合う。

「・・・・?ラビ、先に海に入ってていいぞ。」

「あっ!!イヤ、全然!!荷物コインロッカーに預けなきゃいけないし。」

慌てて、取り繕ったのが、変に思われていませんように・・・。
コインロッカーに荷物をしまって、身軽になったオレ達は、海に走っていく。

波打ち際に立つと、熱い砂浜に冷たい海水が気持ちいい。
波がさらっていって、足の裏の砂が流されていく感覚が好きだ。
ザブザブと海の中に入っていくと、ユウがついて来ない。

「ユウー!!どうしたの??海気持ちいいさぁ!!」

波打ち際で立ち止まってるユウのトコまで走っていくと、ユウにガシッと腕をつかまれた。
ユウに腕をつかまれるなんて・・・・!!

「ラビ!!頼みがある!!」

「ほえ??ユウどうしたん?」

「泳ぎを教えてくれ!!」

鬼気迫る勢いの表情でユウがせまる。
あれ?ユウ泳げなかったっけ?

そういや、体育の選択でプールの授業取ってなかったよな。
運動神経いいユウが泳げないなんて、意外さ!!

「お前、水泳部で泳ぎ得意だろ??俺泳げないんだ・・・教えてくれ。」

ユウが真剣な表情でオレに頼む。
上目遣いなユウにメロドキュンッさ!!

「うん!!わかったさー!!」

泳ぎ上手くなって一緒にプール行こうね、と約束する。
ユウをあんまり人がいないところに連れて行き泳ぐ練習をさせようとした。

「ユウ、じゃぁ、どれだけ泳げるか泳いでみて。」

「・・・・・。」

ユウに泳いでみてと言っても固まって動かないままだ。

「どうしたんさ?」

「・・・・・水に顔つけられねぇ。」

「えっ!!」

軽い水恐怖症じゃないか!!

「じゃぁ、オレの手につかまって顔つけなくて良いから、浮く練習からしてみようさ!!」

手を差し出すと、おずおずとユウがつかまる。
エッ!!どさくさにまぎれて、手につかまってとか言っちゃったけど、手ぇつなぐのとか初めてだし!!
どうしよう・・・・ドキドキしてきた!!

「じゃ、じゃぁ、オレが歩くから、ユウは力抜いててさ!!」

「わかった。絶対離すなよ。」

ユウが不安げな顔でオレを見上げる。
ちくしょう!!なんてかわいいんだ!!

「オッケー!行くさー。」

ギュウッと音がしそうなほど手が握られる。
肩が縮こまって相当怖いのだと分かる。

「ユウ力抜いてさ〜。」

ていうか、こんな至近距離でユウの顔があって、キャミソールの胸のあいたとこから、ユウにささやかな胸の谷間がのぞく。
日焼けを一切していない白い胸に、海水がかかって、しずくが谷間に・・・・・!!
うう、生殺しさ・・・・!!

手を伸ばしたり縮めたりして、ユウを泳がす。
最初は、怖がってたユウだが、だいぶ慣れてきたようだった。
勢いをつけて、ユウを引っ張ると声をあげて、笑った。

「ユウ、水の中楽しいさ?」

「ああ、だいぶ大丈夫になってきた。」

「次、顔つけてみるさ。顔つけたほうが、浮くの楽さ。」

「ん。」

ユウが恐る恐る水面に顔をつける。
チャプッと音がしてその後は静かになる。

遠くで親子連れが砂浜でビーチバレーをしているのが聞こえる。
天気が良すぎて、それだけでもテンションが上がる。
胸にいっぱい空気を吸い込み、空を見上げると、きれいでとても広かった。
そのまま見上げ続けると、一羽の大きな鳥が弧を描きながら視界を横切る。




・・・・・って、あれ?ユウ顔つけてんの、長くね?
小刻みにユウが握っている手が震えている。

「っ!!ユウ!!もう顔上げていいさ!!」

「ぷはっ!!ヒュッ、く、苦し・・・ゴ、ゴホッ。」

「だいじょぶさ!?」

ゼーハー、ゼーハーとユウが肩で息をつく。
肩をさすりながら、ユウの顔を覗き込んだ。

ユウは、荒い息をしていて、顔が真っ青だ

「ユウ、苦しくなる前に、顔上げていいんさ!!」

変なトコにマジメなんだから、この子は!!

「コッコホッ、泳ぐやつって、皆息止めてるんじゃないのか?」

「違うさ!!みんな息継ぎしながら、泳いでるんさ。」

ユウの誤解をなんとかといて、息を落ち着かせる。
次にユウにバタ足を教えた。

「ユウ、次手を離すから、俺のトコまで泳いでおいでさ〜。」

ユウは、ちょっとまだ不安そうだったが、オレのトコまで泳いできてくれた。
ユウが一生懸命泳いで、オレにつかまってきてくれる。

すっごい可愛いさー。

だんだん、距離を伸ばしながら、首まで海につかったところで、ユウを待つ。
パチャパチャとバタ足をして、ユウが泳いでくる。

オレの手にタッチしてユウが顔を上げると、ガバッといきなりオレの肩にしがみついた。

「ふ、深いっ!!」

「深かった?だ、大丈夫さ。」

ユウと体がピッタリ密着して焦った。
そんなオレとはよそに、泣きそうな顔でユウがオレの首にギュウッとしがみつく。

ユウの胸とかあたって、息子が反応しそうさ!
心臓がバクバクしながら、ユウを浅瀬に上げる。

「ごめんさ。怖かったさね?」

ぽんぽんとユウをなでると、大丈夫だ、と頭を振ってくれた。

「ユウ、ちょっと休憩して、ご飯にするさ。」

「わかった。そうする。」

「いっぱい泳いだから、疲れたさ?」

ユウにそう聞くと、楽しかったと言ってくれた。

ユウが泳げないと聞いたときから、もしかして海に来たくなかったんじゃないかって心配したけど、
ユウが楽しんでくれてたみたいでよかったさ!!
午後もいっぱいユウと楽しもう!!と心に誓った。





14話























オレとしたことが!!
オレは、今非常にショックを受けている・・・。
コインロッカーに荷物を取りに戻ったんだが、そこである事に気がついて、愕然とした!!

「ラビ、どうかしたのか?」

ユウがキョトンとした顔でオレの顔を覗き込んでくる。

ああ!!可愛い!!
その超可愛い顔をおさめたかったんさ!!写真に!!

なのに!!なのに!!カメラを忘れたさー!!
は、初デートなのにカメラを忘れるなんて・・・・。

「・・・・しゃ、写真・・・・、写真・・忘れたんさ・・・。」

「は?写真??・・・カメラの事か?」

呆然としてしゃべる言葉も支離滅裂だ。
フラフラと歩くオレをユウが心配そうについてくる。

「げ、元気だせよ。カメラなら売ってるぞ?」

俺も持ってきてないから、買おう?とユウが励ましてくれる。
海の家の軒先にあるのは、色あせたインスタントカメラだ。

うう・・・・、最新のデジカメだったのに。
1200万画素もあって、手ブレ機能もついていたのに!!
どんなユウも撮り逃さなかったのに・・・・!!

「と、とりあえず飯食おうぜ。俺持ってきたから!」

「え!?ユウ作ってきてくれたんさ!!」

一気にパァーッと顔が明るくなる。
海の家でテーブルを借り、ユウの作ってきてくれたお弁当を広げた。

卵焼きに、たこさんウィンナー、ハンバーグにサンドイッチとおにぎりまである!!
すごい!!好きなものばっかりさ!!

「ユウ!!すごいさ!!ユウが作ってくれたの??」

「いや・・・。マリがほとんどやってくれた。」

このクーラーバックもマリが貸してくれたんだ、とバックを見せてくれる。
マリさんとは、ユウの親戚で一緒に暮らしている人だ。
ユウの家は、ディシャさんとマリさんと暮らしていて、たまに絵描きのオジサンが帰ってくるらしい。

「おいしいさ!!」

いただきまーす、と手を合わせて、お弁当にパクつく。
味付けもすごい好みにあっていて、卵焼きも出し巻きの味だ。

「この卵焼きおいしーさ!!」

「あ・・・・、ソレ俺が作ったんだ。」

ユウがちょっと嬉しそうに言う。
甘い卵焼きは正直ちょっと苦手なんさ!
ユウも同じ味の好みで嬉しい!!




















お腹いっぱいになって休憩していると、ユウがトイレから戻ってきた。

「ん。コレやる。」

コトッと目の前に置かれたのは、さっき売っていたカメラだ。

「ありがとー!!って、ユウ・・・・、これ水中カメラさ・・・。」

「そうだ!!水の中でも撮れるだぞ!!」

どうだ!すごいだろう、と言わんばかりでユウが胸を張る。
オレが中身を取り出すと、ユウがキラキラした瞳でカメラを見ている。
オレとしては、ユウの水着姿を撮りたかったわけで、普通のカメラの方が良かったのだが・・・・

まぁ、ユウが嬉しそうだから、いいや。

「お前、写真好きだったんだな。」

「へ?いや、・・・まぁ、普通に撮るくらいだけど。」

「今度、見せてくれ。」

へっ?ユウちゃんを隠し撮りしたやつをですか?
正直、携帯の中にはユウの写真がこっそり何枚か入ってるけど・・・・

「あっ!!」

「どうした?」

「え、いやいや。携帯にもカメラついてるさー!!」

確か、500万画素くらいあったハズ!!
ナイスさ!!オレの携帯!!

カシャッと頬杖をついているユウを撮る。
それからは、嫌がるユウを無理やり色んなところに立たせて、写メを撮りまくった。

「・・・・お前、俺ばっかじゃなくて自分撮れよ。」

ユウがゲンナリした顔で、オレの携帯を奪おうとする。
自分の写真なんて、携帯の画像にいらないさ!!
ユウをいっぱい撮れたら、日替わりでユウの待ちうけができるさ!!

「オレは、いいさー。ユウを撮りたいー。」

「なんでだよ。せっかく一緒に来たんだから、お前も一緒に撮るぞ。」

ユウは、ちょっと怒ったようにそう言って、近くの親子連れに写真を撮って貰えるよう頼みに行った。
ユウが、一緒に写真を撮りたい・・・って思ってくれてうれしーさ!!

そうだよな・・・。デートなんだから、一緒に写真撮らないとおかしいよな。
幸せをかみ締めた、多分ココ最近一番の笑顔でユウと写真におさまった。























「ユウー、喉乾いてないさ?なんか、飲み物買って来るけど。」

「ああ、じゃぁ頼む。」

「了解さー!!」

ビーチパラソルの下に戻ってきたオレは、ユウを待たして飲み物を買いに走る。
海は、塩分が高いから、知らないうちに体の水分が外に出て行ってしまう。
だから、喉が渇く自覚症状がないうちに、水分をこまめに取るようよくジジィが言っていた。

「すみませーん。ペットボトルのお茶と・・・」

うーん、ユウはジュースあんま飲まないから、お茶だとして、オレはスポーツドリンクって気分なんだが・・・。
・・・・もしかして、お茶一本しか買わなかったら、ユウと一本のペットボトルを半分コってなことに・・・。

『ユウー、先飲んでいいさ!!』

『ああ、サンキュ。』

ゴクゴクとユウの白い喉が動く。

『ラビ、お前も飲めよ・・・。』

『ありがとーさ!!』

グビグビと飲み干す。

『あっ・・・・、ユウ、コレって間接キス・・・だよね/////?』

『あ/////。』





「おーい、兄ちゃん。お茶買わないの?」

「あっ!!スイマセン!!」

イカンイカン・・・白昼に妄想トリップに出かけてしまった。
お茶一本分のお金を渡す。

「どうもねー。」

よく日に焼けた笑顔と共に、冷えたベットボトルが手渡される。




「・・・・・・スイマセン。やっぱ、スポーツドリンクもう一本ください。」







15話













ああ!!なんてヘタレなんさ!!
ユウとの半分コがーー!!
トボトボと砂浜を歩く。

ココの砂はサラサラだって、有名だ。
ビーサンを脱いで素足で歩いても、よさそうだ。

「ちょっ、離せ!!」

ユウの声が聞こえてはじかれた様に、顔を上げる。

背の高い3人の男に囲まれた間から、ユウのキレイな髪が見えた。
3人とも日に焼けて、いかにもチャラそうだ。

金髪の髪をした男は、ユウの腕を引っ張り、よほど強い力だったのかユウが男の腕の中に倒れこむ。
血の気が一気にひき、同時に怒りがフツフツと湧き上がる。

「ねぇ、キミどこから来たの?」
「あっちで一緒に海入ろうよー!!」
「友達いんの?だったら、友達も一緒に連れてきなよ。」

「何やってるんさ!!」

一目散に駆け寄り、怒鳴りつけた。
もっと、ドスの効いた声で言ったらよかったが、頭に血が上って制御が効かない。

「だれだれ?」
「あ、もしかして、キミの彼氏?」

「彼女さぁー、俺らと遊ぶんだってー。」

「んなこと言ってねぇだろ!!」

腕をつかまれたままで、ユウが叫ぶ。
ユウの腕をいつまでもつかまれているのが癪で、反対側のユウの腕をグィッと引っ張る。

男は、ニヤニヤしたままで、おいおい、彼女嫌がってるだろーっと笑いあう。

「ユウを離すさ!!」

「だーかーら、彼女は俺らと遊ぶって。」

「いい加減にしろ!!離せ!!」

ユウがすごい剣幕で怒鳴る。

「・・・・おい、いこーぜ。」

2人して、大声を出していたので、ビーチの注目がザワザワと集まってき、3人は居心地悪そうにつつき合う。



バシャッ

「カッコイー彼氏だね!」

3人のうちの一人の紙コップを持っていたヤツに、中身のコーラを顔にかけられた。
一瞬のことに唖然とする。
捨て台詞を残して、3人は去っていった。

「ってめっ!!」

ユウが、追いかけてつかみかかりそうな勢いだ。

「ユウ!もういいって!!」

「でも!アイツ・・・。」

「いいって。」

不満そうなユウの手をギュッと握って、人目のつかないところに移動する。
さっきから、オレらは注目の的だ。

「ラビ、ありが・・・・・
「ユウ、ごめんね?」

「何がだ?」

「ん?だってオレ、ユウの事をちゃんと守れんかったし、一人にしてごめんね?」

かっこ悪かったさーと、呟くとつないだ手がギュッと力を込められる。
なんだろ?と思ってユウの顔をのぞくと赤い顔して、グッと唇をかみ締めていた。

「・・・・ぇ。」

「え?何さ?」

「お前はっ!!全然っ、かっこ悪くねぇ!!」

ユウが大声で叫ぶものだから、ビーチの注目がまた集まる。
ユウは、真っ赤な顔して、でも必死にオレの目を見てくれた。

フッと思わず笑みがこぼれる。
さっきまでの、モヤモヤと、人前でコーラをかけられたショックも一気に吹き飛ぶ。

「へへっ。ユウ、ありがとさー。」

「もういいっ、海はいるぞ。」

ユウは真っ赤な顔をしたまま、ズンズンと進んでいく。
つないだ手は、離さずに・・・・。

























ユウが更衣室から出てくるのを、ベンチで足をプラプラしながら待つ。
日没まであとわずかで、海も空も何もかもオレンジ色に染まる。

「ラビ、悪い。待たせた。」

「ううん。ユウ!!帰ろっか!!」

「あっ・・・、ちょっと日が沈むまで見ていかねぇか?」

うん!とうなづいて隣の席の荷物をどかす。
ユウはチョコンとベンチに腰かけ目をこする。
ユウの髪もオレンジ色に染まって、おそろいみたいだ。

「俺この時間の景色が一番好きだ。」

「そうなんさ?オレも好きさ。」

「なんか、お前の色って感じがする。」

天然で、天然でユウはなんでこんな嬉しいことを言ってくれるんだろう?
嬉しいけど、なんか恥ずかしくって、ユウの顔を見ずにありがとさー、と言う。

「保健室で、目が覚めたときも、この色の中にお前がいた。」

「えっ・・・・。」

覚えてくれてたんだ。
話らしい話を始めてした日のことを。景色のことを。

オレの中の大切な思い出だけじゃなくて、ユウも大事にしてくれているんだろうか?

「あの時から、・・・・そのっ、好きになりかけてたんだ。・・・ありがとう、ラビ。」

俯き加減で、下唇をかみながら、一生懸命伝えてくれる。
オレンジの光のなかでも、ユウが、真っ赤になっているのがわかるよ。

ユウが、こっちをゆっくり向いて顔が近づいてくる。
これから、起こることを勝手にオレの心臓は予想して、ドキン、ドキンと大きく脈打つ。

ユウがそっとオレの肩に手をかけ、唇を触れ合わせた。

フワッと今まで味わったことのない柔らかい感触といい匂いが鼻腔をくすぐる。
時間が止まったかのように感じられたけど、多分時間にしたらすぐ、唇は離れた。

そして、ギュッとユウは肩口に顔を埋め、小さくこう聞こえたんだ。



「誕生日、おめでとう・・・。ラビ。」