「お前、部屋片付けろって言ってんだろ!!いつになったら片付けるんだ!!」
「う〜、一人じゃ無理さぁ!手伝って!!」
書類の山の中をかき分けながら、神田は進む。
いつも、思ってるんだが、コイツ一回見たものを覚えられるなら、この書類全部捨ててもいいのではないか?
そしたら、どれだけスッキリするだろうか。
「ブックマン!!逃げるな!!」
神田が怒鳴るのより一瞬早く、小さな人影がサッとドアから出て行く。
「あはは〜、ジジィ逃げたさぁ。」
「うるせぇ。てめぇが2人分働けぇ!!」
腹いせに一発殴ろうとすると、降参、降参を両手を上げられる。
ため息をついて、唯一まだましな、ベットに腰かける。
ベットの上に無造作に置かれた古ぼけた缶を発見する。
何気なくふたを取ると、中から出てきたものに目を見張る。
「・・・・・お前、こんなものまだ取ってるのかよ。」
「あっ!!ユウー!オレの宝物さわっちゃダメさぁ!!」
神田の手に握られていたのは、黄色く変色した一枚の紙だった。
What
is your hope?
「ユウ〜〜〜!!一緒に寝ようさ〜!」
パタパタとパジャマ姿で廊下を走るのは赤い髪をした男の子。
男の子が目指す先は、黒い髪に背丈ほどもある剣をかかえた男の子。
「ラビ!!」
「へへっ、ジジィの特訓終わったさ!ユウも鍛錬終わったでしょ?」
「お前、昨日も一緒に寝たじゃねぇか。」
ユウと呼ばれた子は呆れ顔。
抱えていた件を大事そうに扱って、背中に斜めに背負いなおす。
不機嫌そうに眉をよせるも忘れずに。
「いいじゃん。一緒に寝ようさ!!」
ラビは、自由になったユウの片手を握り、グイグイ引っ張る。
子供ながらに、部屋に入ったら、こっちのものと分かっているのだろう。
抗議するユウの声を聞こえないフリをしながら、ユウの部屋へ到着!!
「わーい!今日も疲れたさぁ〜」
部屋の主の了承も得ずにベットにダイブ。
「お前!!スリッパ脱げよ!!」
ユウの抗議をよそにラビはモゾモゾと布団に入る。
ユウは、注意しても無駄とばかりに、六幻を部屋の隅に立てかけ、タンスからパジャマを取り出す。
「ユウ、早く〜〜〜!」
布団にすっぽりとくるまり、頭だけ出して、パジャマに着替えているユウを急かす。
「うるさい!待ってろ。」と怒ったふりをして、ユウは急いでパジャマのボタンをとめる。
ユウがこっちにトテテテと走ってくるのを確認して、ラビはユウが入りやすいように、布団を持ち上げる。
「いらっしゃ〜い」
「オレの布団だ!!」
ピンとデコピンするフリをして、ラビに降参をさせる。
眠るまでの間、布団の中で2人だけの話をする。
幼い彼らに似つかわしくないものを背負わされている二人にとって、唯一ただの子供に戻れる時間。
一日の中で一番楽しい時間だ。
「ラビ、誕生日プレゼント何か決めたか?」
「えっ、うーん・・・・。」
「早く決めろよ。もう明日だぞ。何も準備できねぇじゃねぇか。」
むぅっとふくれるようにユウが言う。
七月から聞いているというのに、この優柔不断なラビは、いまだに欲しい具体的なプレゼントを言わない。
「えっと、えっと・・・・。」
「もう、今年はナシな。」
ヤダヤダと頭を振るラビに、神田は意地悪そうに笑う。
「んー!!明日も一緒に寝てくれるってのはダメ??」
予想外の答えに神田はポカンをする。
もっと、本とかペンとかバンダナとか具体的なものを想像してたのだ。
その為に、明日こっそりリーバーに街に連れて行ってもらう約束もした。
「・・・・お前、モノじゃねぇじゃんか。」
「んー!!迷ったけど!!いつも、持ってけるものも欲しいけど、やっぱユウと一緒にいたいさー!!」
「っ・・・・・////考えとく。」
日本人とは違ったストレートな言い方が、たまに苦手に感じるときがある。
頬が赤くなったり、どうしても口元が緩んだりして、困る。
「へへー。ユウありがとさー!」
「まだ、考えちうだって言っただろ!!」
「考え中!!さ。」
「っうるさい!」
「ラビ、誕生日お、おめでと・・・・う。」
ユウが怒ったような顔で、一年に一回の言葉をくれる。
怒った顔をしているのは、どんな顔をしていいのか分からないのと、恥ずかしいのと両方ってことを知っている。
「ありがとう!!ユウ!!」
今日もらうプレゼントは、夜だけど、プレゼントがなくったって、すごく嬉しい。
しかも、昨日一緒に寝たから、起きたのも同じ部屋。
つまり、ユウが一番に祝ってくれる。
今日がすごくいい一日になりそうで、ベットから、はずみをつけて飛び降りる。
「ラビ、・・・・その、プレゼントだ。」
団服に伸ばしかけた手がピタリと止まる。
一緒に寝てくれるっていうプレゼントのはずじゃと頭にハテナマークが浮かぶ。
んッと差し出されたのは、一枚の封筒。
ワクワクしながら、中を開けると数枚のカードが入っている。
『いっしょにねる 券』
カードにはそう書かれた文字と横に黒猫のマーク。
クレヨンで、周りはキレイに縁取られている。
押さえようとしても、口角はみるみる上がっていく。
その場でピョンピョンと飛び跳ねたいのを必死でがまんする。
「〜〜〜〜〜ッユウ!!」
感謝の気持ちは言葉にならなくて、ギュッとユウにしがみつく。
ユウのいつもの抗議の声も今日は少なめだ。
「いつ!?いつ、作ってくれたんさ??」
プレゼントのお願いをしたのは、昨日の夜。
どう考えても、プレゼントを用意できるはずがない。
「・・っ昨日の夜っ!お前が寝てから・・・・。」
リナリーにクレヨン借りにいったんだ、と肩口からくぐもった声がする。
嬉しくて嬉しくて、ユウを抱きしめる両手にさらに力をこめる。
「・・・・・じゅうまいっ!!じゅうまいもあるさぁーーーー!!」
ユウを抱きしめたままいーちっ、にーっ、さーんっと枚数を数えて飛び上がる。
「ユウ、ほんとにありがとう!!」
やっと、ユウを開放して、感謝の言葉を伝える。
ほんとは、こんな5文字の言葉じゃ表しきれないんだけど。
「むー・・・・・。」
手元のカードとにらめっこ。
手元には三枚の白いカード。
誕生日にユウからもらった、『いっしょにねる 券』だ。
十枚ももらえたから、まだまだあると思って、調子に乗って、ほぼ毎日使ってたら、あと三枚しかない。
頭にカレンダーを思い浮かべてみても、次のイベントは、クリスマスまでない。
なんとか、ユウにまた『いっしょにねる 券』をもらえないか考えてみる。
良い考えが浮かばないまま、廊下にユウの姿を見つける。
「ユウ!!」
ユウは団服の下はパジャマを着ていて寝る前らしい。
「ユウ、もう寝るんさ?」
「ああ。」
「じゃぁ、いっしょに寝よ。」
もしかしたら、券を使わずに一緒に寝てくれると言う淡い期待をよせながら。
「今日は、ダメだ。」
「ええー!!じゃぁ、券使う!!」
あっさりと自分の切り札を差し出す。
ユウは困ったように目を伏せる。
「今日は、リナリーの番なんだ。」
ユウの言った言葉が一瞬理解できなくて、ポカンとする。
「お前の券作る時、リナリーにクレヨン借りただろ?そんで、券作ったこと言ったら、
うらやましそうにしてたから、アイツにもあげたんだ。」
ペラッとオレと同じ『いっしょにねる 券』をポケットから出す。
オレの券は、オレンジと緑の縁取りがしてあったのにくらべて、その券は、ピンクと赤の縁取りがしてあった。
「ええー!!リナリー誕生日じゃないのにズルイさぁ!!」
「ズルイってお前・・・。」
こんなに、ユウに券をもらう口実を探していたのに、誕生日じゃないリナリーにもあげているなんて不公平だ。
むぅとむくれながら、自分より年下の女の子に譲らないのは格好悪いよなと頭をよぎる。
リナリーも大事にしたいけど、ユウは、譲りたくないなともんもんと考える。
「・・・お前も一緒に、リナリーのトコで寝るぞ。」
ユウがふくれてるオレに気遣ってか、遠慮がちに言った。
「っうん!!」
ユウの提案に、ふくらんでいた頬も一気にしぼみ、ご機嫌になる。
ユウの手をキュッとつなぎ、リナリーの部屋へと急ぐ。
リナリーは、一緒に来た俺も嬉しそうに、迎えてくれた。
教団に慣れないリナリーは、あまりしゃべらない。
以前に、ひどい目に合わされていたようだ。
今では、お兄さんが来て、時々しゃべるようになったが、兄も忙しいらしく毎日は来れないようだ。
お兄さんがいないときは、ユウと一緒に来ようかな、と思った。
『リナリー寝てる?』
ユウを真ん中にして、リナリーのベットに三人で寝る。
三人でしゃべっていたが、リナリーが静かになったので、小声でユウに聞く。
『ああ。寝てるみたいだ。静かにしろよ。』
リナリーの様子を確認すると、ユウがこっちを見て、シィーっと人差し指を口に当てる。
ユウ越しにリナリーが眠っているのを確認して、ユウだけに聞こえるようにしゃべる。
「ユウ、リナリーに券あげたんだから、オレにももうちょっと券欲しいさぁ。」
ユウがまだそんな事言ってるのかと眉をひそめる。
「なんで、そんなに欲しいんだ?」
「だって、ユウと一緒にいたい!!ユウと話すの楽しいもん!!」
だってーだってー、とユウにごねている内に眠りに落ちた。
「3時のおやつっ!!3時のおやつ〜〜〜♪」
ジジィの部屋から抜け出して、スキップしながら、ユウを呼びに行く。
鍛錬場に向かっていると、ユウがあきれたような顔をしながら、こっちに歩いてくる。
「お前なぁ・・・・。」
「ユウ〜〜〜!!今日のおやつはプリンだってーーー!!」
昼ごはんのときにジェリーから仕入れた情報をユウに伝える。
プリンという単語に、ユウがピクンッとする反応を見逃さない。
大っきい方をユウにあげようと大きな決心をする。
「ラビ・・・・・、これ、やる。」
ほい、と目の前に差し出されたのは、こないだと同じ封筒。
昨日お願いしたヤツだ!!と目が光る。
「ユウ!!ありがとう!!」
中身を確認すると、カードは一枚だけで、少し落胆する。
カードを表返し、ハッと息をのむ。
「っユウ!!」
嬉しいはずなのに、ユウの顔を見上げたとき目じりがかすんだ。
想いがあふれるように、涙がこぼれそうになる。
あわてて零れ落ちないようにゴシゴシと手のひらでこする。
「っなんで、泣くんだよ!!」
ユウの声が慌てている。
ビックリしてユウまで泣きそうな顔になってる。
「ぅ〜〜〜、ユウゥ〜〜〜〜、うれし泣きなんて初めてさぁーーー。」
「ほんとか?」
「うぅーーーー、ユウありがとうーーーー。」
ユウに泣いてるのがばれてたのが恥ずかしくて、ギュッとユウにしがみついて顔を隠す。
自分でも、欲しがってた事すら気付かなかったのに・・・・・。
「オレ、今日からこの券使うさ〜〜〜〜〜。」
『ずっといっしょにいる 券 きかん:むげん』
4444HITリク 藤さま
子ラビュ仲良しもの
おそくなってほんとにすみません!!
書いてて楽しかったです。
ぜひ、また遊びに来てください。