好きだった相手には、ずっと告白できないままだったーーーー
大学に入学して、新入生歓迎会を行うサークルにひっぱりだこになりながら、
長い黒髪がちょっとあの子に似てるかも・・・・・
なんて思ってチラシをもらったその足でそのサークルの新歓コンパに
参加しているあたり、自分はかなりの重症だと気づいた。
よろしくお願いします。
あーあ、なさけないさー。
3年間もずっと好きだったのに、最後くらい告白しとけばよかったさー。
片思いしてたその子は、一度も同じクラスになったことがなく、
名前を覚えてもらえていたかも微妙なラインだ。
結構目立って、結構モテた自分に一度も興味すら示した事がないことは、
片思い中の自分を臆病にさせるのは充分すぎるほどの材料だった。
「ラビくん、コンビニ行こっかー。」
新歓コンパの帰りの流れでゾロゾロと前を歩いている先輩から声がかかる。
「うんー。」
お得意の笑顔で返しながら、酒を買って宅飲みするのかと想像して、
正直こうも連チャンで飲みが続くのはつらいなと思いながらコンビニへと足を進めた。
「いっらしゃいませー。」
やる気なさげな店員の声に迎えられて店内に入った。
案の定ダースでビールをカゴに入れている先輩を見ながら苦笑いした。
「あれ、神田さんしゃない?」
聞こえた単語にビクッと過剰なまでに反応する。
正直、合格発表よりもドキドキする思いで声がした方を見る。
黒い長い髪にキチンと切りそろえられた前髪、意思の強そうな瞳、
まさに3年間、片思いしていた神田ユウがそこに立っていた。
高校が同じだった女の子が
『神田さんも同じ大学だったんだー。』『一緒に神田さんも飲もうよー。』
など言ってるのが遠くに聞こえた。
神田ユウと同級生の女の子は、仲がよかったのか店を出ても一緒にしゃべっている。
最初の動揺はおさまったが、まだしゃべりかける勇気がない中しっかりと2人の後ろを陣取ることは忘れなかった。
相変わらず、すっげーキレイだし、かわいーさ。
そんな事を思いながら、ジッと後ろから見つめる。
「神田さんはどこのサークル入るか決めた?」
「いや、オレは部活しようかと思って・・・。」
どこの部活かしっかり聞いておこうと2人の会話に集中しようとしたとき、
「神田さん、卵食べる?」
返事も聞かずに、半分こね、と言って口元まで持っていたおでんを運ぶ。
同級生に口元までおでんを持ってこられて、しかたなしに神田ユウは口を開く。
開かれた口におでんが入って行き、
ーーーーーーっ、かっわぃーさー/////
思わず赤面してしまい本人たちに気づかれないようにうつむいた。
そうこうしているうちに、先輩の家の前に着き、
「じゃぁ、オレはこっちなんで・・・」
えーっ、寄ってきなよー。という先輩たちの声に、ペコッと頭を下げて神田ユウは、帰ろうとしたので俺はあわてた。
急いで、もっともらしい言い訳を先輩たちに言いつくろってその場を後にした。
「送ってくさー。」
帰りかけていた神田ユウにおいつき声をかけた。
やった!!初めてしゃべりかけられたさ!!
小っさなガッツポーズをしているところに、別にいい、とローテンションな返事が降ってくる。
「いや、俺もこっちの方角なんさー。」
「そうか。」
ポツリと神田ユウがつぶやいた後はテクテクテクと2人分の足音だけが夜道に響く。
「あ、あんさ、高校一緒だったんだけど、覚えてる?」
「・・・ああ。」
本日、2回目のガッツポーズ。
「神田さんて、この大学志望だったんさ。全然知らなかったさ。」
「ああ、ダメもとで受けたら受かった。」
そう俺の行っている大学は、難関校なんさ。神田ユウは知る限り学力は良くはなかった。
剣道強いから絶対来たかったんだ、という言葉が聞こえる。
意外に二人きりの帰り道は、短くあっという間に神田ユウの家についた。
「オレ、家ここだから。」
じゃぁ、と言ってマンションの中に入ろうとする神田ユウにあわてて声をかける。
「ま、待ってさ。」
なんだ、と彼女が振りむいた途端に、しどろもどろになる。
「あ、えっと・・・。そう!講義!!一緒のとろうさー。簡単なのとろう?」
「分かった。」
あまりに簡単に承諾がとれたので、拍子抜けする。
「へ?いいの・・・?」
思わずもれた本音に神田ユウはいぶかしげな顔をする。
「あ、いや。なんでもないんさー。講義って取りたいの決めてる?」
「別に。まだ何も決めてねぇ。」
「おれもそうなんさー。ってか、同じ学部?」
「経済学部。」
「マジ?おれもそうなんさー。んじゃ、明日も授業ないし、明日相談しよ?」
「ああ、昼ごろには大学行ってる。」
「じゃ、明日12時に食堂でいい?」
浮き足立ちそうな自分をなんとかなだめすかし、講義の打ち合わせをするため、明日の約束を取り付ける。
ちゃっかり、昼ごはんを一緒に食べるという約束までした。
3年間、好きだった相手には告白できないままだったーーーーー。
でも、やっとこれから、
よろしくお願いします。