朝、目覚めると心地よく、隣で寝ているはずの恋人に手を伸ばす。

すっげー、幸せさ。

しかし、手をベットの端まで伸ばしてもむなしく空を切るだけである。

ああ、もう鍛錬いっちゃったんさ。

ションボリして起き上がると、布団の下のほうにこんもりとふくらみがある。

「ユウ〜〜〜〜っ・・・・・・・・あれ?」

嬉しくなって、布団の上から抱きしめたが、違和感にハタと手を止める。

小さいのだ。同い年の恋人はこんなに小さくはない。

「ん〜〜〜〜〜っ」

布団の中から声がし、ラビは恐る恐る布団をめくった。

中にいた人物は、急に外気にあたり寒かったのか、一度身体を縮ませたあとモゾモゾと起き上がった。




「誰だ、お前?」

目をこすりながら、黒いサラサラの髪に猫のような瞳をした恋人にそっくりの子供は言った。










「休みが欲しい、休みが欲しい、休みが欲しい・・・・。」

呪文のように呟きながら、科学班班長のリーバーは終わりそうにない書類の山と格闘していた。

「リーバーくーん、ボクも休み欲しいよぉ!」

後ろから聞こえた声にピキッと青筋が走る。

「アンタがサボってばっかりいるから、こんなに仕事がたまるんだろ!!」

「ひーどーいー!!上司に向かってその口の聞き方は何なのさ!」

相手にするだけ時間の無駄だと思いうんざりしていると、自分の側にたっている人影に気づく。

「お!ラビどうした?」

いつもは元気良く、おはよーさ!と言って入ってくるラビの顔を見る。

「ラビ?何か顔色悪いぞ。大丈夫か?」

顔面蒼白で自分の側にたちつくしていたラビはフラフラとソファーに座り、力なく呟いた。

「・・・・ぃたんさ。」

「は?悪い、聞こえなかった。どっか悪いのか?」

「・・・・ユウに隠し子がいたんさ!!」

ラビの絶叫に科学班はシーンッと静まり返る。

静寂を破ったのはラビ本人だった。

「ユウの部屋にユウに似た子供が寝てたんさ!!オレというものがありながら、どこの馬の骨ともわからない女を孕ましたんさ!!」

女子のようにキャーッと言って今にも暴れだしそうなラビにリーバーは慌てる。

ここで暴れられたらかなわない。

「待て待て。ラビ落ち着け。なんかの間違いだろ??」

ゆっくり整理していこう、と言ってラビに近づく。

ああ、また仕事が遅れるなとボンヤリ思いながら。

「少なくとも、俺たちは神田に子供がいたなんて知らないぞ?」

「オレだって、初耳さ。」

「教団に入るには、それなりのセキュリティーがしっかりしてるから、外部者はほとんど入って来れないぞ。」

「じゃぁ、相手は教団内の女ってこと?」

クワァと音がしそうなくらいラビは怒りの形相になる。

「いや、待て待て。それこそ、俺らの耳に入らないって事はないから。神田の部屋に、神田そっくりの子供がいたんだな?」

「そうさ。」

「で、神田は?」

「知らないさ。ゴーレムもつうじなかったし。」

「そうか・・・・・え?待てよ・・・・、室長!!」

コソコソと部屋を出て行こうとしたコムイの襟首をリーバーは掴む。

が、一瞬早くコムイはリーバーの手をすり抜け走り去った。

一体、あのインテリのどこにあの逃げ足の速さがあるのか。

「・・・悪い、ラビ。その子神田本人だ。」

「へ?」

「室長が、また変な薬つくってたんだと思う。昨日サボってどっか言ってたし。」

スマン、といって両手を合わせる。

ポカンとしていたラビの顔がみるみるほころぶ。

「じゃぁ、じゃぁさ!!ユウに隠し子はいなかったんさ!!」

「ああ、普通いないだろ。あの神田に。」

「ユウはもてるから心配なんさ!!あ、でも!!ユウ、俺に向かって『誰だ?』って言ったんさ。」

再び、ションボリとしたラビにリーバーは同情をよせる。

「多分、記憶まで子供の頃に戻ってるんだろ。」

あの人ならやりかねん、とリーバーは呟いた。

「悪いけど、ラビ。神田の面倒みてやってくれるか?」

責任持って室長つかまえるから、とリーバーは言った、











「ユウ〜〜〜、入るよ。」

コンコンとノックして部屋に入ると小さい神田は、シーツにくるまって警戒したようにコッチを見た。

「なんだ。お前。」

「オレ、ラビっていうんさ。ユウね、コムイの薬のせいで子供に戻っちゃったみたいなんさ。」

「はぁ?」

と言って神田は眉間にシワをよせる。

こういうとこ変わってないなーと思いながら、ラビは神田に近づいた。

警戒心をあらわにした神田はシーツをギュッと握る。

「取り合えず、服持ってきたから、着替えしよ??」

リナリーから借りてきた子供用の服をユウに見せた。

神田は、大人用のぶかぶかの浴衣をまとっているだけの筈だ。

全く、警戒心がとけないユウにラビは床に座り、目線を合わせニコッと笑った。

「着替えないと、ご飯いけないさ?」

ユウの好きな蕎麦もあるさよー。と言うとピクッと神田は反応する。

しかし、着替えようとはせず、クリクリした大きい瞳でこっちを見て何か言いたげだ。

「ユウー?どうしたんさ?着替えさせてあげようか?」

「馬鹿にするな!!着替えくらい一人でできる!!」

神田は顔を真っ赤にさせて怒った。

そして、俯いてボソッと呟く。

「その服、ヤダ・・・。」

「え?何か気に入らない?困ったさー、この服しかないんさー。」

「だって、女みたいだから。」

ムゥッと神田はふくれた。

中国風の服で、裾が少し広がっているのが、スカートみたいで嫌なのだろう。

かっわいぃーさ、思わずニヤニヤとラビはにやけた。

「だいじょぶさ。下にズボンもはくから。」

しぶしぶ神田は、ラビから服を受け取り、ラビが同性だからか、躊躇せずシーツから出る。

パサッとぶかぶかの浴衣を払い落とし一糸纏わぬ姿になる。

///ヤバイさっ!!

下着を履こうとかがんだ時に、丸いふっくらとしたお尻に釘付けとなる。

普段なら、ラビの視線を気にして、目の前で堂々と着替えなんかしないのだが、今はそんなこと気にも留めずに着替えている。

無防備にさらされた薄い胸板やまっすぐに伸びた足にムラムラとなる気持ちを必死に落ち着ける。

落ち着け、落ち着くさ!!ユウは子供、ユウは子供・・・手ェだしたら犯罪さ。

煩悩を消し去ろうと自分に言い聞かせていると、犯罪的なかわいさの生き物がこちらを見つめてくる。

「な、何?」

「これ、どうやって着るんだ?」

「あ、これはね、ココ外して・・・・・ハィ、バンザイしてー。」

条件反射で、神田は手を上にあげる。

服を上からかぶして、ボタンを留める。

「次は、ズボンさ。右足入れてー。」

ラビがそう言うと神田はラビの肩につかまり大人しく右足を入れる。

めっちゃかわいいさ。ラビは至福の時間を感じた。

ズボンもきちんとはかせ、次は靴下・・・と思うと靴下がひったくらせた。

「////着替えくらい一人でできるって言ってるだろ!!」

つい、言われるままに服を着せられたのが恥ずかしかったのか、神田は赤くなって言った。

よろよろとおぼつかない手つきで靴下を履いた神田に靴を履かそうとするとまた怒られた。














「あ、かわいー。神田、おはよう。」

食堂につくとリナリーに声をかけられる。

神田はマジマジとリナリーの顔を見る。

「お前、リナリーか?」

「ふふ、そうだよ。ゴメンね、兄さんが変な薬作ったせいで。」

「本当か?」

「えぇー!!なんでユウ、リナリーの事知ってるんさ!!」

「だって、神田とは子供のころから一緒だから。」

「ずるいさ!!」

こんなかわいいユウと一緒だったなんてズルすぎる。

ムキーッと怒るラビにリナリーは困ったような顔をする。

「こいつの言ってた事は、本当だったんだな。」

神田は、注文した蕎麦を受け取りながら言った。

「なんで、オレの言うことは信じてくれなくて、リナリーの言うことはすぐ信じるんんさ!!」

「うるさい。」

抗議するラビを放っておいて神田はスタスタをテーブルにむかう。

その様子を見て、リナリーが笑う。

「なんか、小さくなってもいつもと変わらないね。」

「でも、めっさかわいぃーさー。」

いつものユウも可愛いけど、トロンとした目つきで言うラビにリナリーは苦笑した。



ラビがテーブルにつくと神田は蕎麦と格闘していた。

まさに格闘。

箸で蕎麦をすくっても、パラパラと蕎麦は落ちていく。

「ユウ、なんかいつもとお箸の握り方違うさ?グーで握っちゃダメさ。」

以前、ラビがお箸を使ったとき神田から注意された事だ。

「鉛筆持つように握って、中指と薬指の間にもう一本のお箸いれるんさ。」

神田に教えられたように教える。

ギュッとコブシで握っていた神田のお箸をとり、説明する。

神田は、言われたように、持つが力の加減が分からないせいか、お箸を何度も落としてしまう。

グゥと神田のお腹の音が聞こえ、ラビはかわいそうになった。

「ユウ、ちょっとお箸借りるさ。はい、アーン」

ラビが蕎麦をすくい、神田の口元まで蕎麦を持っていく。

最初は、恥ずかしそうにしていた神田だが、空腹に負けたのか、大人しく蕎麦をすすった。

ツルツルと蕎麦をすする神田の可愛らしさに思わず、ギュっとしたくなるが、嫌われると思いなんとかガマンする。
















「ユウ眠い?」

食事の後、鍛錬をし、部屋に帰ると夕方になっていた。

神田は疲れたのか、うつらうつらとしている。

「ユウ、お昼寝しよっか。」

コクンと神田はうなづき、ベットに上ろうとする。

「ユウ、待ってさ。鍛錬して汚れてるから、パジャマに着替えなきゃダメさ。」

ユウは服を脱ごうとするが、眠さの為、なかなか脱げない。

ラビが手伝っても、今度は文句を言われなかった。

ラビは、ップチンプチンとパジャマのボタンを留めながら、いつも脱がせてばっかだけど、着せてあげるのもいーかも、と思った。

神田は、ベットに入るやいなや3秒も経たないうちに寝息をたて眠ってしまった。

ラビもつられて眠くなり、神田の隣にモゾモゾと入る。

子供の体温はあったかく、ラビもすぐ眠りについた。
















神田が目を覚ますとにやけた面の兎がいた。

「ユウちゃん、おはよーさ。」

「ってめぇ。」

「あ、もしかしてユウ覚えてる?」

子供になった時の記憶がバッチリある神田は赤面する。

ラビは神田の髪を撫でぎゅっと抱きつく。

「ユウゥ〜!!めっちゃ可愛かったのに、オレこうすんの超ーガマンしたんさ!!」

ほめてー!とラビはばたつく。

「当たり前だろ!子供のときから、掘られてたまるか!!」

「ユウちゃん、下品ー。」

「うるせぇ!服着るから離れろ!」

「あ、オレがお着替えさせたげる〜。」

ゴスッとラビを殴って布団から出る。

部屋には、ラビが用意してくれた子供のようの服が目に入る。

それを見て、自然と神田は口角が上がった。

ガバッと後ろから衝撃がきて身体がぐらつく。

「ユウゥ〜!!やっぱめっちゃ小さいユウもかわいかったさー!!」

「そうか、よかったな。」

ラビを引き剥がそうとするが、なかなか離れない。

「決めた!ユウ子作りするさ!!

「アホかぁ!!」

教団中に神田の怒声が響いた。

















400キリリクを柚貴さまより、ラビ×仔ユウたんで着せ替えゴッコでいただきました!!
めっちゃ楽しく書かせていただきました。かっこいいラビ兄さんにしようと思いましたが、早くも玉砕。
仔ユウたんの破壊力はすさまじいです。